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流域システム工学研究室(九州の川の応援団)の概要
流域システム工学研究室では,水を媒介とした自然と人の営みが融合したシステムについて研究,教育活動を展開し,水に関するさまざまな自然と社会の仕組みを整える手法・技術について,社会に働きかけることを目的としています.そのために,当研究室の目的は日本や世界の河川や流域のシステムをどのようにすれば健全にできるか?生物や人々が豊かな暮らしをする国土にするにはどうすればいいのか?に資するための研究を中心として活動しています.したがって,私たちの研究はほとんど具体的なものを対象にしています.社会のためになることが研究の基本となります.
九州の川の応援団は、川の環境を良くしたいと思っている全ての人・生き物を応援するための団体です。河川等の水辺の生き物の生息場の保全再生を行い、併せてその活動の関係者を元気づけ、地域づくりへ発展させる活動を行っています。市民との対話や合意形成、環境教育活動を大切にし、生物多様性の大切さを多くの人々と共有し、地域活性化につなげている点が特徴です。これらの活動は学生も含め研究室全体で取り組んでおり、生物多様性に将来関与する人材育成にも寄与しています。市民や行政等様々な主体、老若男女が一堂に会し、いい川について発表しあう“ふくおか水守自慢!”等のイベントを10年以上にわたり毎年開催し、楽しみながらいい川をつくるための活動を実践しています。
調査研究のスタイル
流域システムに関する学術分野は人文科学,自然科学,工学,農学,生態学など広範囲にわたります.本研究室のベースは工学ですが,これらの境界領域融合型の新分野の開拓・確立を目指しています.そのため,研究や活動は,応用生態工学,土砂水理学の研究から合意形成や景観,水害の研究まで幅広く実施しています.したがって多くの他分野の研究者との共同研究や交流,市民活動との連携など外に開かれた研究となっています.多くの研究はフィールドを中心に行っています.具体的には以下のようなスタイルがあります.
1.現地調査や観測
2.模型実験(水理模型・景観模型)
3.ヒアリング・アンケート等
4.ワークショップ(様々な人との交流)
現地調査や観測
流域システム工学研究室では,数字や座学だけでなく,実際にフィールドに出て,河川の状態や自然環境を目で見て,肌で感じながら研究する姿勢が基本です.研究室に配属されるとすぐにタモ網やサデ網,電気ショッカーなど生物調査で使用する道具の使い方を現地調査の回数を重ねて学びます.卒業する頃はみんなプロ級です.また河川の形態やその変化などを知るために測量も行います.トータルステーションを用いた測量や写真測量,最近は衛星を使ったGPSの測量まで様々な機械を使います.
模型実験(水理模型・景観模型)
実際に事業を始める前に必要なのが,地元住民との合意形成です.事業の内容によっては合意形成がとても難しい時も多々ありますが,その際に強い味方ツールとなるのが,模型です.住民の方々は図面などを見ても実際の姿はわかりません.リアルな模型を作ることで,具体的なその事業の内容がわかり,自分たちの地域にもたらすメリットがわかります.時には住民の方々が模型の粘土をいじって,「こんな風になって欲しいんだよ!」という伝達の手段としても効果を発揮します.模型を作るのはセンスと丁寧さが求められますが,研究室のみんなで協力して作り上げます.また,技術的な面においても,模型は水の流れや景観に関する検討を詳細に行う上で非常に重要なツールです.
ヒアリング・アンケート
日本や世界の河川や流域のシステムをどのようにすれば健全にできるか?生物や人々が豊かな暮らしをする国土にするにはどうすればいいのか?に資するための研究を行うためには,「地域では今,何が起こっているのか.」「何を困っているのか.」などの地域固有の問題や現状を把握する必要があります.その際に行うのがヒアリングやアンケート調査です.ヒアリングでは,敷居の高いところから質問するのではなく,地域の方々の相談役として行ったり,時には世間話から聞き取ったりします.質問の仕方,地域の入り方はみんな様々ですが,「地域の方々に親身になって話を聞く」というスタンスが基本です.
ワークショップ(さまざまな人との交流)
流域システム工学研究室では、様々な地域・場面でワークショップを多く開催しています.時には先生:100人以上の会場の人とディスカッションをしながら進めることもあります.
学生も色々なワークショップに行きます.地域の方は先生には言いにくいことも学生には話しやすいこともあるようで、学生だからこそできることもあります.ワークショップや話し合いでは,高いコミュニケーション能力が求められます.大学院の授業では合意形成論演習という授業があり,話し合いがうまく進む座り方やKJ法などを学びます.